2008年02月19日

N=1の存在-書評-「脳」整理法

「脳」整理法 (ちくま新書)「脳」整理法 (ちくま新書)
茂木 健一郎

筑摩書房 2005-09-05
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あのアハ体験で有名な茂木健一郎さんの作品。脳科学から見た効果的な記憶術や発想法というテーマを連想させるタイトル。しかし、そんな小手先の内容とは違い、本書では脳科学というフィルターを通して語られる茂木健一郎さんの人生訓が語られています。茂木健一郎が語る「生きるヒント集」。
目次:
第1章 脳は体験を整理し、知を創造する
第2章 生きて死ぬ人間の知恵
第3章 不確実な時代こそ脳が生きる
第4章 偶有性が脳を鍛える
第5章 偶然の幸運をつかむ脳の使い方
第6章 「自分」を離れて世界を見つめる
第7章 「他人」との関係から脳が育むもの
第8章 主語を入れ替えて考える
第9章 脳に勇気を植えつける
第10章 「脳」整理法ふたたび


本書を読み解く上で、重要になっているのが「偶有性」という言葉。聞きなれない言葉ですが、この言葉が人生において大きな意味を持ってきます。なぜなら、人生とは偶有的なモノだから。もっと言えば、「私」や「世界」という概念ですら偶有的なものなのです。

「偶有性」とは偶然性と必然性の中間。つまり半ば偶然にして、半ば必然的に起きるという性質のことです。例えば「私」という存在で考えてみましょう。「私」が明日何をするのかはある程度予測可能です。なぜならスケジュールや約束という必然性があるからです。かといってすべてが予定通りに進んでいくとは限りません。それは人間というのは必然性がないからです。突然の頭痛や、友人のちょっとした一言で簡単に調子が上がったり下がったりします。「私」という存在は偶然の出来事によっても影響を受けるのです。

現在、科学で扱うことができる現象は必然性または偶然性に特化した性質を持つ現象のみだと本書の中で主張されています。天体の動きなどは、極めて正確に予測できるそうです。そこには必然的な運動法則があり、次の月蝕や日蝕を予言できることからもあきらかです。

一方まったくの偶然に支配されるランダムな現象も、確立や統計と言った手法で扱うことができます。サイコロの目が出る確率は完全にランダムですが、それぞれの目が出る確率は予測できます。こういったことは保険商品にも応用されています。ある特定の個人がいつ死ぬかは予測不可能ですが、たくさんの人間を集めれば平均してどれくらいの寿命があるのか計算はできます。

ですが、偶有的なモノとなるととたんに説明ができなくなります。ぼくの専攻は経済学なのですが、その中ではすべての人間が合理的に行動するという仮定の上で、話が進んでいきます。人間が一円支払う苦痛と一円で得られる満足感だけを考えて行動している存在となるのです。ですが、そんな人はどこにもいないことは明白です。どんなに合理的な人でも、損得抜きで感情で動くことだってあります。ただそうしないと経済というものは説明できなくなります。

では、私達はどうすればいいのか。話は簡単です。偶有性を受け入れてしまうのです。不確実性を楽しむと言い換えてもいいかもしれません。

「脳」整理法:P.074
生きることに不安を覚えるのは避けることはできないが、できれば楽しんでしまった方がいい。
不確実性を楽しむという「生活知」は、そもそもこの世界の本質、とりわけ生の本質は「偶有的」なものであり、不確実性は避けられないものであるという認識のもと。「覚悟」を決めることによってこそ得られるのではないでしょうか。
私達は時として「明日は必ず来る」と思い込んでしまうことがあります。しかし、年齢を重ねる事に死ぬ確立は確実に上昇していきます。明日生きている確立がたとえ99%だとしても、自分が残りの1%に入らない保障はどこにもありません。私という存在は統計では表せないN=1の存在なのです。
本書を読んでN=1の存在として今を精一杯生きていこうと強く思いました。

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